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映画化による『チーム バチスタ』の崩壊

海堂尊という作家をご存知ですか?

現在、原作の映画化に漫画化にとブレーク中の小説家の医師です。

いや、医師であるゆえに小説を書くことになった小説家という方が正しいのかもしれません。

彼の著作は全部で11作品。
その内の8割はAI(オートプシーイメージング)という、患者の死因を的確に探る死亡時画像検索システムの重要性を説いた内容になっています。

AIとは、患者さんが亡くなられたあとに、CT、MRI、超音波検査といった画像診断を行い、その結果を死因の解明に役立てようとするシステムのことです。

米国では、検死の手段の一つとして認められていますが、日本ではまだ認められておらず、死因の分からない患者がたくさんいるとのこと。。

例えば、2007年に変死した日本人は実に15万人
そして、なんとその内、死因を特定するために解剖をしたのはたったの9%

それ以外の91%、つまり13万6500人の変死患者の死因は闇に葬られていることになります。

特に子供の遺体は傷つけてたくないという理由で、虐待死した子供の死因が特定されないこともあるとのこと。。

あなたの家族や恋人がその91%に含まれる可能性がないわけではないのです。



海堂さんはそういった日本の閉ざされた医学会に風穴を開けるべく、小説という多くの人の目に留まりやすい媒体を使ってAIの啓蒙に励んでいるようです。



そこで、今回の映画化です。


今日、早速観に行きました。












かなり残念な気持ちになってしまいました。

原作が好きだからかな?


 

何を伝えたいのかがよく分かりませんでした。

映画化によるテーマはなんだったんだろう?

海堂作品のテーマである、というより執筆の目的であるAIについては、ほんの少しだけ扱われているだけ。

確かに、事件の解決はAIのおかげであることは描かれているが、日本におけるAI導入の過酷さはまったく描かれていない。

『そうだ!死体をスキャンすれば死因が分かんじゃない?』

といった安易な感じで話が進み、事件が解決されるのです。


もっと訴えた方がいいテーマはたくさんあるのに。



AI導入に厚生省が二の足を踏みまくっていることだとか、そのせいでどれだけの人間が死因不明となっているのかだとか、病院は企業と同じく経営の対象になってしまってあり、人の命を左右する病院が、利益を求めることがお門違いであることだとか、病院内のどろどろした政治関係だとか。。

この映画が失敗している点は以下の2点じゃないかと思います。

①テーマが絞れていない

②撮影方法がいまいち


①については前述の通りである。原作の良さである以下の点を盛り込むべきであったと思う。

a) 死因不明社会の恐怖

b) のらりくらり暮らす田口と、医学会をさっそうと滑空する桐生との対比

c) 病院内の子供じみた政治

この三点が抜けきっている本映画は、最早映画とは呼べず、
ただのフィルムの無駄使いであると思う。

テーマの無いメッセージ作品 又は 芸術作品に価値はないと思うからです。



②の撮影方法のいまいちさについては以下の通り

a) 受動的性格(パッシブ)である田口がソフトボール部に所属 
  している違和感

b)  前編通して曇り空であるため、気分が滅入る。
  ラストの桐生と田口の別れ際くらいは、晴れにして欲しかった。

c) 患者がレモンティの歌を歌うシーンの意味
              ↓
 ギャグなのか?真面目なシーンなのか?
 あまりにシュールすぎて、全く笑うことなどできず、 
 ただ観ていて居心地が悪くなった

d) ロジカルモンスターである白鳥に魅力がない
              ↓
  完全に、ちょっと常識的になっただけの『トリックのあの人』である。
  野際陽子さんもちょっとキャラひきずっているし、狙ってるのか?
  ロジカルシンキングに関する薀蓄も出ず、

 『行き当たりばったりと見せかけて、実は計算ずく。だけどやっぱり 
 行き当たりばったりなんだろ?あれ、でもその行き当たりばったり  
 加減さえロジカルに見えてくる』

 といった白鳥の魅力が観たかった。

e) 配役は悪くないが(竹内結子以外)、キャラを上手くいじれて
    いない。
              ↓
  欠点)
  ・高階病院長のタヌキ加減が、さえない会社の窓際部長に見えてくる

  ・田中直樹にはもっと壊れたサイコを期待していたが、
   ただの疲れた若者だった。

  ・前述したが、野際さんが『トリックのお母さん』とだぶってしまう。
   心優しき百戦練磨の元婦長、といった雰囲気を出せる設定が
     欲しかった。大友の性格の悪さも辛さも見守る大人の余裕とか。

  良い点)
  ・鳴海役を演じた池内 博之は、完璧に鳴海涼を掴んでいた!
   役のイメージに合う役者だったのではなく、役のイメージを 
   理解し、実践していた。義兄を想う気持ち。 
   才能ある人間ゆえの驕り。
   自分の可能性を誰よりも信じる、挑戦的な若者。

  

良い点をもっと挙げようと思ったけど、思いつきません。


映画化によって

『AIを広めよう、医学会の暗闇に光を差し込もう』

という考えを実践することは難しいと思いますが、話題になることによって
原作を読む人間が増えることを祈っています。


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