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修羅場と自己実現

こないだ仕事で大きなミスをした。

受注印刷物の下阪(印刷物データを印刷するための直前作業)間際にミスが見つかり、急きょ修正を加えた。

その仕事は何度も受けていた仕事と同じような案件であったので、いままでと同じ仕様に修正し下阪し印刷をした。

その修正に間違いがあった。

制作の人間も僕もミスを見逃した。

受注額は約500万円。


クライアントからは以前ミスがあった際にこれが最後通告だ言われていた。

長い茶色のテーブルのある会議室で、メッシュ加工された高価なビジネスチェアに腰かけたクライアントはそう言った。

屈辱的だった。

今でも彼の言葉は頭の中から出ていかない。

いずれ、○○社は大きな問題を起こすだろう。

彼はそうも言っていた。

今回の件が分かった時も、彼の言葉が頭の中で鳴り響いた。


そんなことを言われるこの関係に、自分の仕事をコントロールできていない自分自身に、作業をしてくれている会社の人間を上手く動かせない自分自身に、責任を全て自分が飲み込むしかない現状に、そしてミスは他の人間のせいでもあると心のどこかで感じている自分自身に、嫌気がさし、怒りが湧き、それら全てをひっくるめた現状に心から憤りを感じた。


そして今回の事件。

事態が社内で発覚した時点では、納期までに再生産を行うことは可能だった。

だが、ある加工を加えることで事態を収められそうということになり、上司はクライアントへその加工の了承を得るよう僕に言った。

僕は断固反対した。

上司と口論している最中、クライアントの言葉がずっと頭の中を回っていた。

『ここで再生産をかければ(再生産をしても粗利益は残る計算だった)間に合う。

逆に、クライアントに話せば信用を失う。

この先の仕事に関わる大きな大きな信用を失う。それは今回の再生産費用とは比べることのできない程の額だ。

再生産をすれば会社が傾くというなら了承するが、そうでないならやらせて欲しい』

結局、会社の苦しい財務状況もあって(再生産してもつぶれるわけでないが)クライアントに上記の提案をすることになった。


僕は悔しくて悔しくて、初めて仕事で涙が出た。

約束を守れなかった自分が惨めで、失う信用の大きさがショックで。


だけど、その提案内容の加工が不可能なことがクライアントへの連絡後に発覚し、再生産となった。


僕らは信用と利益の両方を失った。

幸い、取引停止とはならずに今でも取引は続いている。

僕の会社もつぶれていない。

だけど、以前とは違うということは誰よりも僕自身が分かっている。


二度と信用を失わせない。

絶対に。

これ以上の信用をつけ、あの人を見返してやる。


この事件までは、もっと自分が成長できる企業に移ってばりばりやるつもりだったが、気持が変わった。

この件にケリをつけるまではこの会社を離れない。

なぜなら、それが僕の自己実現に向けた道にある通過点だからだ。

認めたくなかったが、まだ僕は足元が固まっていなかった。

この道を通らずに、他の道から進むことを選択した場合、僕は僕自身に対する自信がつかない。

必ず、ケリをつけてやる。

こうありたいと願う自分になるために、僕は必ずこの試練をパスしてみせる。

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